ARCADIA号 LOGBOOK  DAY6 5月1日 海難事故一歩手前まで行きました。

海難事故一歩手前まで行きました・・・・。

あれは、やけに空が蒼い5月初めの事だった・・・・・。

風もなく、波もなかったから俺はいつもは行かない沖まで船を出す事にしたんだ。

そして、伊良湖水道を抜け渥美半島沖に船を走らせたんだ。

それはもう気分よくブッ飛ばしてな!

今日もどうせ釣れないだろうと、半ばヤケクソになって、ちょっと前に買ってみた曳き釣りを始めたんだ。

コレ

簡単に言えばトローリングだ。

やっぱり釣れなかった・・・・・。

そこで、俺は神島の南の沖を目指す事にしたんだ。

その前に伊良湖水道を横切らなきゃならねぇ。

伊良湖水道と言ったら中部地方の産業、いや日本の自動車産業を支える大動脈さ。

そこには山の様にでっかい船がひっきりなしに通っていくんだぜ。

そんな、お船に迷惑はかけられねぇ。

タイミングを見計らってサッと伊良湖水道をひとっ飛びさ。

この時は、あんな悲劇が起こるとも知らずに・・・・・・。

俺は、伊良湖水道を無事に超えた事に安心して船を止めてタバコに火を付けたもんよ。

さあ、一服つけたし、もおひとっ走りすっか!

船のリモコンレバーを微速前進から増速、さらにスピードアップ!

あれ?エンジンの回転が上がらん・・・・・・。

『ピー!!!!!!!!!』

「ブル・・・・プスっ」

エッ !!!!!!!エンジン止まったぞ!!!!!! 落ち着け俺。

エンジン再始動、イグニッション、オン!

『ピー!!!!!!!!!』

「ブル・・・・プスっ」

かからん。何回やってもエンジンかからん。

ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!

おい、船が流れで伊良湖水道方向に戻されてるぞ!

まだ、エンジンかからん!

ああ、クソッ!コンテナ船が近付いて来た!

伊良湖水道にもうすぐ入っちまう!

その時俺は考えたんだ・・・・。

・コンテナ船は俺の船を避けてくれるのか?コンテナ船に比べたら蟻みたいに小さな俺の船を。

・コンテナ船が気が付かずに、もしくは避けきれずに衝突したら?

・コンテナ船にぶつからなくても引き波に巻き込まれたら転覆するかも?

・転覆を免れてもこのまま漂流するのか?

・海上保安庁に助けを求める?

・救助に凄い請求が来るのは山の遭難だったけ?海の遭難だったっけ?

・明日の中日新聞に載るのか?県内版?東三河版?テレビは嫌だ!

この時、俺はマジでスマホを持って海上保安庁に電話するか迷っていたんだ・・・・。

ちょっと待て!海上保安庁に助けを求めた所で、救助に来てくれるまで1時間は掛かるだろう。

コンテナ船は後、10分内に衝突するかどうかの距離に近付くのは間違いない!5分かも!

もう伊良湖水道の内側に入ったぞ!

自分で何とかしなければ!

その時、ふと窓の外を見て違和感を感じたんだ。

出港後に何かやる事を忘れてた気がしたんだよなぁ・・・・・・・。

ロープ!船を係留するロープがクリートから海に落ちてる!

船外機のチルト(角度)を上げてみる。

チルトが上がらない。間違いねえ!自分の係留ロープがスクリューに絡んだんだ!

まずはロープ専用のナイフでクリートの根本からロープをカット!

チルトを上げる。

「こ、こいつ動くぞ!」

スクリューを海面まで上げると見事にロープが絡んでいました。

もうコンテナ船があんな所まで!

原因は判明しましたが、このロープを解けなければエンジンは掛かりません。

再度、ロープ切りを使ってロープを細かく切ってロープを解きました。

よし、ロープは解けた!

後はエンジンが焼き付いてない事を祈ります。

頼む!エンジンかかれ!

掛かった!

一発でエンジン掛かりよったで!

緊急離脱!最大戦速じゃーーーー!

というわけで無事生還して新聞沙汰にならずに済んだ。

いや〜ビビった。マジで。

エンジン止まってから、もう一度エンジンが掛かるまで手と脚が震えてましたわ。

後から聞くとロープを切る時に、もしも手を滑らせてナイフを海中に落とした場合に備え、ロープ切りのナイフは2本用意しておいた方が良いらしい。しかも、パン切りナイフで代用できる。(濡れて締まったロープには普通のナイフでは刃が立たない。パン切りナイフのギザギザの刃がロープを切るのには最適とのことです)

それと、ナイフは落とさない様に手を通す紐を付けておく事。

切ったロープとナイフ

 

一応装備していたロープ切り。持ってて良かった。

巻きついたロープの跡。クソッ!新品の船外機だったのに塗装が剥げてしまった。

 

幸いペラ(スクリュー)には損傷はありませんでした。やったね!

略図

プライスレスな経験ができました。